ゴンザレス三上
gonzalezmikami
『各曲解説その12曲目』

「夏の終わりの庭」

この曲、実は、すでにピアノ演奏だけで、電波に乗っているのです。
僕達が担当するNHK FMの「世界の快適音楽セレクション」の、喫茶「謎」のコーナーでかけたはずです。
「世界の快適音楽セレクション」のジングル等の多くは僕が作っているのですが、これが本アルバムのアレンジ・シミユレーションのような事も多々あり、この番組、結構ソロアルバムに貢献しているのです。

で、本作は、そのピアノ演奏(僕がトツトツと弾いたもの)を譜面に起こして、誰か名人に弾いてもらう、という計画だったのですが、菅谷さんに依頼した譜面起こしが難航。どうも間合いなどの認識が違い、たとえ緻密に譜面を起こしても、実際に演奏する際には、そのプレーヤー独自の、また違った間合いになるであろう事が発覚し、暗礁に乗り上げました。

でも、菅谷さんも僕も、この曲を棄てるのは惜しい、という事では一致していました。で、僕が弾いたピアノを編集していこうとしたのですが、帳尻を合わそうとすればするほどオカシクなってきて、これも却下。

結局、殆ど手直し無しの元のピアノを採用しました。
つまり、僕が弾いているという事です。
何だか変なのですが、これを弾いた時は、何かに取り憑かれたように弾いていました。
良く憶えていないのですが、その時は名プレーヤーだったのかもしれませんね。

そしてその上に、詩の朗読を。
14年前も一曲目に、かの香織さんにイタリア語で朗読して貰っていますが、
歌詞でも、ラップでも無く、現代詩的なモノを読んで貰うのが、何故か大好きなのです。ゴンチチの「XO」でもフランス人の方に朗読して貰いましたからね。

詩は、他曲を制作中に浮かびました。
ピアノの、何とも言えない沈黙さ加減を、夏のある瞬間の沈黙とクロスさせたかったのですが、結果はどうだったでしょう?

なかなか危うい試みでしたが、案外「この曲が好きだ」という人が多いので驚きます。そして、とても有り難いです。そのように、深く、あるいは根源的な本能の部分で聴いて頂けるのが一番嬉しいからです。

ソロを制作しようとした時に、最初に手がけたのは、この曲と「green submarine」の二曲。暗礁に乗り上げた時は、終わったかな、と思いましたが、何とかなるものですね。菅谷さんと二人して、相当な時間を、この曲に費やしたのですが、それが報われて、とても嬉しく、そして付き合ってくれた菅谷さんには、感謝の気持で一杯です。

さて、実際の朗読は、前半部分を韓国語で、ラブ・ホリックのカン・ヒョンミンさんに。後半部分を日本語で、遊佐未森さんにお願いしました。
この人選、もう本当にビックリするくらい大当たりでした。
初めてカンさんの声を、ピアノバックで聴いた時、鳥肌が立ちましたし、その後、遊佐さんが朗読をした際も、これまた鳥肌モノでした。

短い夏の終わりは、リピートされると、冒頭の、朗らかでゆるやかな春の「課外授業」へと続いていきます。

*****************************************************

皆さん、いかがでしたでしょうか?
僕の拙い曲解説は何かのお役にたてたでしょうか?

僕のアルバムを聴いて頂いた皆様に感謝します。
また、これからも、楽しく、深く、軽やかに、粋に、そして真摯に音楽をやっていきたいと思います。
これからも、どうぞ宜しくお願いいたします。

『各曲解説その11曲目』

「techno flea」

和訳すると、テクノ蚤です。
全編に多重録音された三本のウクレレが飛び跳ねます。
ハワイ語で、ウクレレは、跳ねる蚤という意味らしいですから、この曲にはピッタリではないかと思っています。

テクノなフレーバーに、跳ね回るウクレレ、そしてナショナル・スティールギターの枯れた音が良く似合います。

中盤に登場するアルトサックスのソロは、津上研太さん。
松村さんが菊池さんのアルバムで聴いて、これだ!と思ったのが最初の出会い。
以来、アルバム「XO」、「我流一筋」、そして本アルバム「green shadow,whit door」と三作立て続けに登場です。

津上さんのアルトソロは、とにかく、もう痒い所に手が届く感じ。
この曲でも、かなりの数のソロを吹いて頂きましたが、みんな素晴らしかったです。皆さんにお聞かせ出来ないのは本当に残念。

でも、ソロライブ最終日、渋谷クアトロではスペシャルゲストとして思う存分吹いて貰えましたよ。

『各曲解説その10曲目』

「夏夢薄暮」

9曲目の「秋風に乗って」とフレーバーは似ていますが、こちらは、ソロ制作中に作った作品。

歌うエレキギターといえば、即座にサンタナが浮かびますが、日本で言えば、高中正義さんです。僕と歳はそう変わりませんが(高中さんの方が少し先輩です)、何しろデビューが早いので、そう言う意味でアイドルであり、大先輩であるのですが、この曲では、何故か、高中さん風のエレキギターが弾いてみたかったのです。本人に弾いて頂いても良かったのですが、どうしてか自分で高中風に弾きたかったのです。つまりこの曲は高中さんへのオマージュなのです。

それにしても、高中さんのアルバムの一聴衆だった僕が、高中さんのレコーディングに呼ばれたり、ツアーでは、新幹線の中で延々と音楽の話をしたりと、そんな光栄な事になるなんて、全く考えもしませんでした。

エレキギターインストの先駆け、高中正義さんは、やはり日本の宝ですね。

『各曲解説その9曲目』

「秋風に乗って」

この曲こそ、沖縄で言う「古酒」です。
一体いつ頃作ったのかさえ、忘れてしまう程。
毎回惜しいところで選に漏れて、ゴンチチのアルバムには遂に登場する機会が無かったのですが、今回は、そのクモの巣を被った曲の埃を払って登場させました。

羽毛田さんが、僕の埃まみれの打ち込みデータを、サラッピンの新品に変換してくれました。そうすると、何だかちっとも古い感じがしません。
というか、むしろ僕の考えている所より、さらに先にあるような気さえしてきます。
個人的に、この曲は、心が朗らかに軽くなるような、それでも、何処かに微かな感傷をたたえる、秋の空のようで、とても好きです。

『各曲解説その8曲目』

「マルシェの黒い熊」

笹子さん率いるショーロ・グループ「コーコーヤ」参加の一曲。3曲目の「マルシェの白い熊」とは異名同曲。

笹子さんとは、地方の音楽フェス等でお話する機会を得て、メールのやりとりをする事に。そして、今回のレコーディングという事になりました。
僕は何事も、本格派というのが苦手ですが、笹子さんは、僕に苦手意識を起こさせない初めての本格派のギタリストでした。勿論テクニックもソウルもとても素晴らしい方です。

「コーコーヤ」は、好々爺という事なのでしょうが、笹子さんはともかく、その他のメンバー(といっても後二名)は、何と、若き美女二名(バイオリンに江藤さん、クラリネットに黒川さん)です。
レコーディング当日は、パーカッションに、小野リサバンドでも大活躍の石川智さんを迎えて、試行錯誤しつつも数テイクで完成。

蛇足ながら、この曲は、5月より、関東圏エリアで、京王のTVCMになりました。
柴犬が、最後に登場するのですが、これがとっても可愛いですね。
勿論、主演女優の広末さんもとても良い感じです。

『各曲解説その7曲目』

「bridge to fall」

今回のソロの計画が動き始めた頃に、作った曲です。
個人的に、かなり思い入れのある曲で、何度も作り変えて、完成するまでに相当時間のかかった曲でもあります。

「秋への架け橋」という邦題でしたが、レコーディングが進んでいくうちに、何故か、英名に変化していきました。

サウンド的には、打ち込みサウンドに生のドラムとベースが絡む、4曲目や5曲目と近いやり方ですが、サイドギターは3種類入っており、その他、シンセストリングスやコーラス、ハモンドオルガン等が、パステルを何層も塗ったような、そんな響きを醸し出しています。

今回は全体的にそうなのですが、サウンドはかなり重層的に作ってあります。聴く度に徐々に音像が変化していくように、色々工夫したつもりですが、それが功を奏したかどうか。

さて、ボーカルは、吉田美奈子さんです。音楽業界の大大先輩(年齢は殆どかわりませんが)ですし、実際、美奈子さんの音楽を聴き、育ってきたような僕ですので、お声かけするのは、どうも不遜な行為に思えました。でも、良い偶然が重なり、美奈子さんの音を録音する事が出来、本当に光栄でした。

実は、この曲は美奈子さんに歌っていただくために作った曲です。しかし、歌っていただける事は無いだろうと思っていました。誰か他の人に歌ってもらい、そして良いテークが録れたら、「実は、この曲は…」といって種明かししようと思っていたのですが、種明かしの必要も無くなりましたね。

深い深い歌声が、秋への架け橋を渡って行きます。

『各曲解説その6曲目』

「De vento em popa(帆に吹く風)」

今では、お洒落な雑貨店や、輸入食料品等を扱う店では、もう至極当然のようにBGMで流れているのが、ボサノヴァです。家の近くの、スーパーでは、夜の9時頃を過ぎると、いきなり聴いた事も無いコアなブラジル音楽がかかり、買い物の手を止め、思わず聴き入るという事もしばしばです。

ゴンチチでも、ボサノヴァ風の曲は多いのですが、今回は少し趣向を変えてみました。一聴すると同じように聴こえるかもしれませんが、サイドギター等は、所謂ボサノヴァギターのカッティングとは違う事をしています。

ところで、この曲に様々な色どりを与えてくれたのが、羽毛田さんです。彼のピアノも実に端正に響いて美しいです。
それから、naomi & goroのお二人のヴォーカルとコーラスが、更に深い色どりを与えてくれました。

手前味噌ですが、僕がアドリブを弾いている、ジャズギターの音、これがとても気に入っています。フジゲンというメーカーで、今までも何度も使用していますが、今回は特に曲とマッチして、とりわけ美しい音になりました。

『各曲解説その5曲目』

「夕暮れの憂鬱」
北海道のイマージュコンサート帰りの機内から観た夕暮れは、とても奇麗でした。特に、夕日が完全に沈んだ後の、赤いカーテンのような夕空が、うっすらと闇の中に掛かっているのが美しくて、息を呑みました。
夕暮れというのは、心も体も健康であればあるほど、やけに切なく感じるもののようです。そんな夕暮れを観ながら、何処か昔に忘れてきたような、微かな憂鬱を紐解いてみる…。切なさの額縁の中にある、憂鬱。そんな思いに浸っていると、何処かで電話のベルが鳴る…。

4曲目に引き続き、アレンジは、これもキオト君の秀作。
元々、僕が打ち込んだデータには、ピアノが上手く弾けないので、まるで無茶苦茶なピアノソロが入っていました。でも、何度か聴いているうちに、それが逆に面白くなってきたので、実際の録音では、中島ノブユキさんに、少し前衛的なピアノソロを、とのオーダーを出しました。結果、全く期待通りの、素晴らしいソロが出来上がりました。

ピアノソロに続いて出てくるギターソロは、ゴンチチの作品を含め、今までの楽曲の中で一番長い、ギターアドリブとなりました。このアドリブは、ほぼファーストテークを使用していて、少しスパニッシュな雰囲気のアドリブが、ストリングスに絡みながら、延々と続きます。この曲なら、夕暮れ時が過ぎて、あたりが真っ暗になっても、ずっと弾いていられるな、と思えるほど、気持のよい録音でした。なので、実際のギタープレイは、夕暮れ後の、真っ赤なカーテンの空のように情熱的です。

アルバムを作る時に、特に頭をひねって、コンセプト等というものを考えたりはしないのですが、今回はギターを沢山弾いてみよう、という考えは漠然とありました。14年前のソロはとても満足でしたが、少しギターが少なめだったかな、とも思っていたからです。なので、この曲で、沢山のギターアドリブが弾けたのは、とても満足でした。本当は、もっともっと弾いていたかったのですが。

ところで、デジタルビートに絡む、楠君の絶妙な生ハイハットの妙技も随所で
光っており、これも必聴です。

『各曲解説その4曲目』

「green submarine」
ガラスの美しい破片、切れ切れの細かい布等々。微細で美しい断片で形作られた素粒子アレンジはキオト君の秀作。
元々の打ち込みは、僕がして、菅谷スタジオで、またまた一進一退していたのですが、キオト君の音が、一瞬、脳裏をよぎったので、早速電話しました。僕達のアレンジをベースにしながら、全く無視して欲しい、等と訳の分からぬオーダーでしたが、出来上がったアレンジは殆ど手直しなしの、素晴らしく我々のイメージに合うものでした。
とりわけ、ベースになる打ち込みをゴシックのように組み合わせ、その上に自らのアレンジを施して、一艘の潜水艦のように完成したフォルムに仕立て上げたアレンジに大いに感動した我々は、その後、津上さんのソプラノやエレキギター等のアグレッシブな方向性を見いだしていったのです。
なお、この曲では、打ち込みのドラムと楠君の生ドラムが共存しています。規則正しい打ち込みドラムと、感情の波に自在に伸縮する楠君の生ドラマが、モアレのようでモアレでない美しいグルーブを生み出しました。
偶然にも、「くじら」というグループにいた二人。そのキオト君と楠君の二人がいなかったら、この曲はもっと違ったものになっていたかもしれません。

余談ですが、キオト君のデータは全てネットでやり取りしました。何しろ高音質なデータの送受信なので、余分な反復データ等は切り詰めて送らないと大変なデータ量になってしまいます。でも、送られてきたものが、あまりに切り詰められたデータだったので、受信したこちらは、PC上で、キオト君が送ってくれた組み立て図面を見ながら、ジグソーパズルを組み立てるようにパーツ音源を一つ一つ繋ぎ合わせていかなければなりませんでした。実はこれが結構大変なのです。で、それを一人でやったのが、ミキサーのイカちゃん(肩が非常になで肩なのでイカちゃんです)こと松田龍太君です。今や、スキマスイッチ等で超売れっ子のミキサーなので、普段はこういう作業は、アシスタント君がやってくれるので、まぁ楽なのですが、緊縮財政故か、あるいはプライベートスタジオ故か、アシスタント君がいない、ので自分でやるしかなかったのです。かつての優秀なアシスタント時代を思い出しながらかどうか分からないですが、黙々とやってくれました。
それにしても、イカちゃんのキーボード操作は、ショートカットの連続、まさに神業です。なので短時間で作業が終了できました。でも、もう次は勘弁して下さい、とも言っていました。実は次の曲もキオト君のアレンジだったのですが…。

naomi&goroのおふたりより

ゴンザレス三上さんは、いつお会いしてもとても素敵な方です。
繊細さと気品。優しさと知性。
お会いする度に、目が釘付けになってしまいます。
そんな憧れの三上さんの14年ぶりのソロアルバム。
パリのメリーゴランドにのって、くるくる回るような「マルシェの白い
熊」「マルシェの黒い熊」
マントンの海を、滑るように、船で巡るような「de vento em
popa」
素敵なアルバム、ありがとうございます。
布施尚美


はじめて会ったときも
今回レコーディングで会ったときも
話題はギターの話し
僕には数少ないギターの話しが出来る
大切な人です。
伊藤ゴロー

naogoro1g.jpg