ゴンザレス三上
gonzalezmikami
『録音綺談=はじめに』

 一枚のアルバムが出来上がる頃には、譜面や録音資料をまとめた、かなり分厚いプライベートファイルが、一冊できあがります。元総務系社員で、マメに資料を作ったり保存したりするのが手慣れているからなのでしょうか、スタッフよりもはるかにきっちりとした自慢のファイルが出来上がるのです。
 もっとも、立派な一冊が出来上がるのは良いのですが、ファイリングすると、すっかり安心してしまうのか、あるいは記憶をファイルに依存してしまうのか、何かの用件で、再度ファイルを取り出して開いてみても、これが全く何も思い出せない事が多いのです。
 今回も、立派な分厚いファイルが一冊できあがりました。が、やはり、ファイルを取り出して開けても、あまり思い出せません。部分部分は鮮明に記憶しているのですが、それがどのような順序で進捗していったかという全体像になると、まるで分からない(ついにゴンもボケが始まったか、と心配されるかもしれませんが、若い頃からそうなので、心配無用(?)です)。
 という訳で、今から書いていく事に、つじつまが合わない事多し、となるかもしれませんが、何分にもそういう事情なので、皆様、ご容赦下さい。
ゴンザレス三上

三上さんの音  吉田美奈子さんより

それは遠い昔、愛による動機で創造された彫刻に隠された物語に似て、生きていることすら切なく感じるほどの極上の音楽です。
吉田美奈子

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山かげに潜むガンダーラ 菅谷昌弘さんより

のぞみに乗るといつも眠ってしまうそうだ。東京から戻る下り列車、指定された座席は右側が多いらしい。富士山の見える側だ。でも三上さんは富士なんか見 ない。とっても深い無意識の底、眠りについている。
そんな三上さんも、眠りの底から引き上げられる瞬間があるという。不思議とそれは決まった場所で、怪しげな外観のホテルが車窓に現れるのだと言う。もっ とも「怪しげな外観」と形容しているのは今の私であって、その話を聞いた時、三上さんの説明は複雑で、聞いた私自身記憶できないほど曖昧であり、不鮮明 なものだった。きっと言葉を探していたんだと思う。その揚げ句「なんか変な感じのホテル」くらいの言い方しかしなかった気もする。
曖昧で不鮮明なもの。それを形あるもの、構造や原理へと結び付ける営みは、頭が痒くなるほどまどろっこしく、もどかしさに疲弊する。寝ぼけまなこで目に するそのホテルの形容。私にはその言いようの無さが、痛いほど、解る。もっとも解るのは「言いようの無さ」についてであり、やっぱりそのホテルがどんな ものかは解らない。だから、三上さんが発した言葉の断片からまず自分で想像してみるしかない。
私が絡んだ曲のミックスが終了して、今度は私がのぞみに乗った。名古屋で別の仕事があったのだ。指定席はたまたま二列シートの窓側だった。天気がいい。 年間数度しか乗らない東海道新幹線。嫌というほど乗る三上さんと違い、私は寝ない。子供みたいに外を見てる。やっぱり富士山は奇麗だ。新富士を通過する 辺りは特に面白い。製紙工場の煙突がぽこぽこ立って、ぐにゅぐにゅする配管を曝したプラントが広がる富士の裾野。キンダイニッポン!って感じの風景。そ こを斜めになってのぞみが通過して行く。
富士が隠れ、沿線の景色が落ち着き始めた。静岡を越えた辺りだろうか。退屈して、ちょっと眠くなってきた。等間隔に真っすぐに伸びる田圃のあぜ道が、 びゅんびゅんと目の前を流れて行く。それが催眠効果になっているのかもしれない。うとうとしだし、瞼がくっつきそうになったその時、寂しげな山かげにど んよりと建つ建造物が目に飛び込んできた。鉄筋の、高度経済成長期に建造されたと思われるホテル、ラブホが、暗く、一軒だけポツンと建っている。のぞみ のスピードに合わせて固定した焦点を移動させる。ようやく読み取った屋上の電飾板に、大きく「ガンダーラ」と書かれていた。カタカナで、怪しげにクニャ クニャした字体で。
三上さんが目覚めるのはここだろう。東京から1時間ほど過ぎた場所だ。車内で特別なアナウンスは無いから、三上さんの睡眠リズムがこの時間と一致してる んだろう。
私は三上さんと同じものを見ていた。
高速で移動するのぞみの、通過する様々な景色の中から、この同じ一瞬を拾い上げることができた、という確かな感触。
なんかそれだけで嬉しくなって、安心してしまって、その後三河安城まで私は眠ってしまいました。

菅谷昌弘

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カン・ヒョンミン(LOVEHOLIC)さんから

ポエトリーリーディングは初めての経験だったので、レコーディングに入るま
で、どうしたらうまく表現できるか正直少し心配でした。
しかし繰り返し曲を聴きながら詩を読んでいるうちに、いつの間にか三上さんの
音楽と自分が読んでいる詩が同化してくる気がしました。
曲のテンポに合わせて一語一語の意味を噛み締めながら、自然な低いトーンで丁
寧に読みました。
そうして出来上がったものを聞いてみると、遊佐未森さんのリーディングが重
なったことで、自分1人では出せなかったいい味が出ていてとても満足しました。
ありがとうございました。

カン・ヒョンミン(LOVEHOLIC)
‥写真右

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楠均さんより

ニューアルバム完成に寄せて
三上さん、ニューアルバムの完成おめでとうございます。
早速聴かせていただき、その色情、いや色調の見事さに腰が抜けました。
持ち前の強烈な原色に加え、今回は様々な色がていねいに、
そして遊び心たっぷりに混ぜ合わされて奥行きのある曖昧な色、
フワリと軽みのある色、幾重にも変化するグラデーションが生み出されていますね。
サンプル盤はジャケットが小ちゃく仮印刷なので注意を払っていなかったのですが、
よーく見ると僕が感じた色彩の微妙さがそっくり描かれていたのでもう1度腰が抜けました。
アルバムタイトルにもその気配がうまく表されていますね。
レコーディングでは偶然にその作品に特徴的な何かが得られることもありますが、
本作の場合は三上さんが細部から全体に至るまで適確にデザインされたということがわかり、
その拍子に3度目の腰が抜けました。
悔しいけどしばらく立てまへん。

楠均

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中島ノブユキさんから

三上さんの鋼(ハガネ)のように強靭でしなやかな指先から繰り出され
生み出された作品はこんなにも現代的な物だったのですね。

現代的だというのは決して近未来を先取りしていると言うことではなくて、
むしろこの作品は現代の(つまり今からこの作品を聴くことになるであろう)
人々にある種の日常とは少し違う時間軸を提供することになると思います。

それはボサノバを愛する人にも、フランス音楽を愛する人にも、
ジャズを愛する人にも、クラブミュージックを愛する人にも、
愛らしい柔らかなアコースティックギターサウンドを愛する人にも、
そしてなによりゴンチチの音楽を愛する人にも...。 

三上さん、うれしくてちょっと泣きそうになってしまいました。
愛のあふれる素敵な作品をありがとうございます。

中島ノブユキ

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ゴンザレス三上より…『ソロについて』

14年ぶりのソロアルバム。嬉しいと言ってよいのか、恥ずかしいと言ってよいのか。
14年間も何してたの?と言われてしまいそうですが、
ゴンチチ本体が忙しく、それなりに充実していたからかもしれません。
今回は、前回と同じスタッフで取り組もうという事になりましたが、
ミキサーの松田君はスキマスイッチ等で超売れっ子、
同じく、僕と共同でアレンジやプログラミングを担当する羽毛田さんもイマージュやドラマ音楽等でこちらもひっぱりだこ。
各人の雀の涙ほどのスケジュールを繋ぎ合わせて、いざ出航となりました。
それでも始めてみれば、昔と何の変わりもありません。
皆で右往左往しながら、音楽の大洋を航海するのは、やはりとても幸福です。
吉田美奈子さん、宮本文昭さん、中島ノブユキさん、遊佐未森さん、津上研太さん、LOVEHOLICさん、naomi&goroさん等のゲストを迎えた、思いのほか豪華客船の旅。
みなさんもどうぞ乗船して、14年振りのクルーズを楽しんで下さい。              

ゴンザレス三上